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Farm

黒 川

熊本県阿蘇市

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阿蘇の自然の循環の中で
ひたすらに、「味」にこだわり続ける

世界最大級のカルデラ・阿蘇外輪山に囲まれた阿蘇谷は、標高約500mの位置に一面、平野が広がるエリア。ここで整然と区画整備された田んぼが広がる景色は、美しく雄大だ。阿蘇の伏流水が流れる黒川と土地の恵み、そして田上さんのひたむきなこだわりが、美味しい米を生み出している。

阿蘇の地で代々受け継がれてきた
畜産と米の専業農家から兼業農家へ

我が家は阿蘇で代々、畜産と米をやっている専業農家ですが、私の代ではJAに勤めて兼業で農家をしていました。40年ほど勤めましたが、2021年3月に退職して、今は専業農家になりました(取材時は退職3ヵ月後)。黒毛和牛の繁殖と、5haほど規模で米を作っています。父や祖父から習った米作りを、ずっと続けています。

豊富な水と恵まれ
お米作りに適した土地
阿蘇谷の平野

この阿蘇谷の平野は阿蘇地域有数の米処の1つです。元々、米は湿地の方が美味しい米を作りやすいと言われており、黒川地区のこの付近も湿田が多い地域です。加えて、阿蘇の伏流水を含んだ黒川と地下水を引いており、ミネラル豊富な水も豊富です。このように恵まれた立地であることに加え、1haごとにきれいに田圃整備がされているので、機械を入れやすく効率的な米作りができやすいですね。

兼業で培われた経験と知識
学び続けることで
作り手と米の“顔”がみえてくる

平日はJA職員、休日は農業の日々が40年続きました。しかし、職員の立場では農家の目線で業務に臨むことができ、逆に兼業農家の立場では、JAで取り扱う様々な農薬や肥料、機械のことを深く知ることができました。自分の米作りに活かせる知識やスキルを得ることもできたので、よい相乗効果だったように思います。

中でも、特に深く学んだのは「土作り」についてですね。農家さんを訪問する機会も多くあり、外部の方に肥料の入れ方を学んだり、日本屈指の米処、魚沼にも研修で4回ほど行きました。「どうにか、あの米を阿蘇でも作れるようになりたい」との思いで臨み、魚沼の土を持ち帰って分析を行うなど5年ほど研究しましたが、やはり気候や水の硬度、立地条件が全く違うので難しかったですね(笑)。しかし、自分たちの土地のことも改めて理解するきっかけとなり、よい経験になりました。

とはいえ、同じ阿蘇地域でも農家さんによって米作りへのこだわりや工夫は様々で、例えば同じ阿蘇谷の平野でも、土の中の火山灰の多さなど細かな条件は場所によって違います。そのため、作り手によって米粒の表情というか、「米の顔」が違うんですよ。JA時代に米の検査を行う部署にいたのですが、「米の顔」を見るだけで、「この米はあの農家さんが作ったものか、なるほど」と分かるほどになりました。

昔ながらの方法で
手間暇かけた堆肥と
その塩梅が絶妙なうま味に

米作りでの一番のこだわりは堆肥です。このあたりの土は火山灰が多く入っており、そのままだと収量も採れないし質も落ちるため、堆肥は欠かせません。我が家は黒毛和牛の繁殖をしている関係で堆肥も自前で用意しています。ただ土に混ぜ込むのではなく、しっかり発酵させて使うなど、手間ひまをかけるのがこだわりです。

昔はどの農家にも牛がいて、外輪山でカヤを刈って牛に食べさせ、そこで出た堆肥を田んぼに使って…。化学肥料ばかりを使う米作りとはちがい、自然の循環の中で行うのが阿蘇の米作りでした。今もうちでは、その昔ながらの方法をとり続けています。

ただ、肥料の塩梅にも工夫が必要です。私の土地は湿地なので水が抜けにくく収量が出やすい反面、肥料も抜けにくいという特徴があります。米の食味は、米に含まれるタンパク質の量が高いとうま味が落ちてしまいます。ですので、なるべくタンパク質を減らしたいのですが、肥料が土に多く残ってしまうとタンパク質が増えてしまうのです。絶妙にうま味が残るギリギリの肥料の加減を工夫しています。

阿蘇谷の田園を守り
「美味しい」と納得できる米を
作り続けたい

私の様な兼業農家もずいぶん減りましたし、農業を続けたとしても米より収益性が高いトマトやイチゴなどの施設園芸に転換する人も少なからずいます。また、このあたりは年間雨量がとても多くて、だからこそ水が豊富で米作りしやすいという利点もあるのですが、災害が多い土地でもあるのです。それで広い土地を持て余して田を手放す農家も年々増え、耕作放棄地やその周辺環境の保全が大きな課題となっています。畔の草刈りですら人手が足りない状態ですから。そこで、水田の維持管理を委託できる法人を地域に作って、大きな農業機械が必要な作業などは発注できるようにし、地域の水田全体を保全できるような取り組みを行っているところです。
そして、阿蘇谷の田園の風景を守るため、環境を保全するために米作りを続けていきたいというのが第一です。その上で、収益のために量を追い求めるのではなく、徹底して品質、そして「味」にこだわっていきたいと思います。
例えば、カネガエさんと取引しているコシヒカリやヒノヒカリに加え、「ミルキークイーン」という銘柄もこだわって作っています。これは数十年前、「こんなに美味しい米があるのか!」と驚き作り始めたもの。正直、コシヒカリやヒノヒカリよりも銘柄の知名度は低いですし、収量があまり増えない品種なので、商売としては難しい面もあります。でも、やっぱり自分が「美味しい」と納得できるような米を作り続けたい。それが一番です。

カネガエとのお付き合いも20年ほどに
信頼できる「お米を見る“目”」

良くできた米をきちんとした評価で、こちらの期待に応えてくれるような取引をしてくださるので、お米のつくりがいがあります。その米を見る“目”にも信頼がおけます。

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